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研究室紹介

イオン液体

 イオン液体は、イオンだけからなる塩(えん)であるにもかかわらず、室温付近で液体状態を採る物質群の総称である。 難揮発性、不燃性、高いイオン伝導性、特異な物質溶解能、広い電位窓など、従来の水や有機溶媒とは全く異なる新規溶媒である。 低環境負荷媒体としての物性を有し、熱い注目と期待が寄せられている。そして何よりも魅力的なことは、構成イオンの大多数が有機イオンであるため、 望む形に物性・機能や利用法を設計できることである。1992年に空気中で安定なイオン液体が合成されて以来、それらは大きな注目を浴び、 様々な分野での利用に熱い期待が寄せられてきた。通常の液体の概念を破る多様でユニークな性質や現象の発現、 ユニークな物性を生かした反応場・分離場・電気化学場などへの新規媒体としての利用、 構成イオンのデザインによる新たな機能性液体の創出、置換基と組み合わせを変えるだけで何万ものイオン液体を合成できること等々、 まさに「液体科学の革命」と目される所以である。世界中で、イオン液体をテーマとした熾烈な研究競争が繰り広げられている。
我々の研究室は、平成17〜21年度にわたり、科研費特定領域研究「イオン液体の科学」の領域代表として国内の60を超える研究グループを統括してきた。 22年3月に本特定領域は終了したが、イオン液体に対し『液体としての地位と役割』を確立し、環境調和型物質科学の展開に繋がる様々な芽を芽吹かせることができた。 世界に誇れる日本発の成果も多く含まれている。

 当研究室で特に力を入れているイオン液体の研究テーマは、相挙動・相変化のダイナミクスを含んだ構造や熱物性の解明、構成イオンの親水性/疎水性の定量的評価、 イオン液体を用いたナノ粒子の合成、新規イオン液体の設計と合成などである。

 構造や物性研究の立場から、イオン液体の本質を探り機能発現のメカニズムを解明してきた。 一例は、イオン液体の物性(特に熱物性)のユニークさは構成イオンのflexibilityと立体配座の多様性に因ることを基礎的な系で明らかにし、 現在多くのイオン液体に展開している。イオン液体の相挙動は、超スローダイナミクスと複雑さで特徴付けられる。 「イオン液体ならでは」のいくつかのユニークな現象を、世界に先駆けて発見した。

 イオン液体には、液体状態や相転移時に階層的なドメイン構造が存在し、複数の緩和メカニズムが存在することが明らかにされつつある。 イオン個々の運動を支配している速いダイナミクス(〜1012秒)から非常に遅い相変化(〜102秒)まで、広範な時間範囲にわたる現象がイオン液体の様々な動的過程において存在する。 当研究室でも、時間スケールの多様な現象の基礎的解明を進めている。

 イオン液体は、通常の液体の概念を破る不可思議な液体である。通常の液体(分子性液体)との比較を念頭に、これまでも多くの研究が成され、ユニークさをもたらす原因の一端が見えてきた。 第一に、(言わずもがなであるが)イオンだけから構成されていることである。第二に、構成イオンのflexibilityおよび構造(立体配座)の多様性がイオン液体の特異な性質を生んでいる。第三はドメイン構造の存在である。 イオン液体特有なものとして、極性・非極性部分が作るドメイン構造、構成イオンの構造多様性が作るドメイン構造等々があげられる。当研究室では、ドメイン構造の存在と現象を様々な手法で明らかにし、 ドメイン領域の大きさを見積もり、それらが生むユニークな現象を解明してきた。bulkな液体構造、相転移、それらのダイナミクス、ドメインの内部構造の解明を中心テーマに据え、 イオン液体をイオン液体ならしめている要因を解明し、機能発現の指針に繋げることを目指している。

 ある種のイオン液体は、他の気体に比べ選択的にCO2を溶かす。モル比にして4倍ものCO2を溶かしながら、イオン液体の体積はほとんど変化しないという不思議な現象がある。CO2がどのように溶けているか、 どのような相互作用をしているのか等、規則構造を持たない系の構造研究と物性研究は、当研究室の最も得意とするところである。これが解明されれば、効率的なCO2を溶解するイオン液体の設計・創出に繋がり、CO2の新たな吸蔵・貯蔵技術に道を開くことになる。

 イオン液体は、難揮発性の液体として特徴付けられる。これは、液体の真空科学/技術が展開できることを意味する。このことを利用して、スパッタ法で、新規ナノ粒子を合成している。このことについては(3)ナノ粒子の項で紹介する。

 イオン液体の構成イオンは、多くの場合有機イオンなので、置換基の導入や官能基の置き換えによって、物性・構造・機能がデザインできる。ハロゲン結合や構成イオンのflexibilityに観点を置いた新規イオン液体の設計・合成・物性制御・機能発現のための研究も行っている。

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