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研究室紹介

『ゆらぎ』から見た超臨界流体

 超臨界流体の構造は、分子分布の不均一さで特徴付けられる。我々は、不均一さをどのようにしたら定量的に表現できるかを考え、「ゆらぎ」と言う概念に思い至った(『ゆらぎの構造化学』確立をめざして)。 分子の不均一分布を均一分布からのズレとして表現する「密度ゆらぎ」である。 密度ゆらぎは、波数ベクトル零における散乱強度に比例することから、小角X線散乱 (SAXS) 実験から実験的に求めることができる。 「ゆらぎ」は、最近様々な分野で注目されているキーワードである。超臨界流体の構造表現に分子分布のゆらぎを最初に導入したのが我々である。 この10数年で、代表的な10種以上の物質について、超臨界状態のゆらぎ構造をSAXS実験より求めてきた。成果を纏めると以下のようになる。 相図で表現するなら、超臨界流体領域に気液曲線を延長する形で、「密度ゆらぎの尾根線(Nishikawa Line)」が存在することを示したことである。 この尾根線は、Gibbs free energy の3次の微分量が零となる点の軌跡である。 尾根線を境にして、様々な物理量が液体的な振る舞いをする領域と気体的な振る舞いをする領域に分かれることを示した。 例えば、超臨界流体を溶媒として溶解度を測定してみると、溶解度の非常に小さい領域から急激に溶解度が増加する領域に至る。 その境目が尾根線である。超臨界流体を溶媒として化学反応を行うと、速度定数は、尾根線上の熱力学状態で極大・極小・変曲点などをとる。 密度ゆらぎは、Gibbs free energy の圧力による2次の微分量である。 Gibbs free energy の温度・圧力あるいは濃度による2次の微分量が反応の律速段階を支配している反応系においては、 上記のように、尾根線が反応の特異点となるようである。これらの現象は、温度、圧力、密度をそれぞれの臨界定数で規格化して表現すると、 物質の種類によらない一般則として成り立つ。すなわち、ゆらぎという物理量も対応状態の原理が成立している。

 一成分超臨界流体系については、代表的な物質のほとんどを、我々の研究室が実験をやり終えた。現在、超臨界流体混合系への展開をはかっている。 すなわち、混ざり方の不均一度(混合状態)は、「濃度ゆらぎ」で表現される。「濃度ゆらぎ」の精密測定とともに、混合状態が超臨界流体二成分系の物性にどのような影響を及ぼすかを研究している。
二つのテーマを例としてあげる。超臨界二酸化炭素に水やアルコールなどの微量成分を加えると、媒体としての機能が大きく変わることが知られている。 これをエントレーナー効果という。エントレーナーを含んだ超臨界流体の構造と、何故そのような機能が変わるのかの解明を目指している。

 「水と油」という言葉が示すように、通常の状態では、水は多くの有機溶媒と混じり合わない。ところが、水を超臨界状態にすると有機物とよく混じり合い、 逆に無機物を溶かさなくなる。混合状態の解明を軸に、何故このようなことが起こるのかを解明することも我々研究室の重要なテーマの一つである。

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